園長メッセージ

園長メッセージ
Message from the director

5月主題…気づく

今月の聖書の言葉

あなたはわたしのもの。わたしはあなたの名を呼ぶ。 …わたしの目にあなたは価高く、貴い。
[旧約聖書:イザヤ書43章1、4節より]

 このイザヤ書は紀元前6世紀後半に、国の壊滅的状態の中から希望を告げるために記された書簡です。聖書において「名を呼ぶ」ことはその存在と人格を認め、共にあろうとする意志を示すことです。神がその名を呼ぶことは、人の評価にかかわらず、あくまで神はその一人を価値あるかけがえのない存在として見ているということです。大人も子どももたえず様々な“評価”に振り回され、排除や差別に悩まされる世の中ですが、神の目からわたしは認められている、という絶対的安心こそが、生きていく基盤となるのです。わたしたちも、あるいは子どもに対しても、互いが神に貴い者とされていることを心にとめ、尊敬の心を持って接していきたいと思います。

 本来なら子ども同士も、新しく友だちになった子どもの名前を呼び合う日々が始まってるところです。子どもの声が響かない園庭のなんとさびしいことでしょう。それでも新葉は輝き、山鳩やセキレイが鳴き交わす声が聞こえ、蝶は蜜を吸い卵を産む場所を探しに来ています。家の周りでも、神さまのつくられた世界に目をとめ、その不思議さに気づきたいですね。

 「巣ごもり」生活でしょうか。この感染症への対応で失うものがあるかも知れませんが、激変する状況においてこれまでの在り方を問い直し、今の自分たちの姿に気づく機会でもあるように思います。身近な人との関係を見つめ直したり、これまで価値があるとされていたこと・ものが、本当にそうだったのか見直す、子どもが加わった家族の関係がどの一人にとっても豊かなものになっているか、不安や不満を聞き合い喜びを伝え合うことができているか…。子どもたちは、最も近くにいる人たちから、ものごとの価値や善悪などを感じ取り、生きていく上で根っことなるものを身につけていきます。例えば散歩の中で交わされる言葉、絵本を通して親子で感じたことを話し合う、子ども向けのテレビ番組や自然・動物の番組などをいっしょに見て、楽しいことや悲しいことを言葉に出して伝える、いろんな場面で互いの(マスク無しでの)表情をたしかめることなどです。そうした毎日の積み重ねが、子どもが持つ世界を外にも内にも広げていくことになります。やがては巣から飛び立っていく時が来るのです。与えられた今という時間に感謝し、それが益となるよう活かしていく日々を重ねていきましょう。           (西嶋佳弘)