園長メッセージ

園長メッセージ
Message from the director

7月号 靴屋のマルティン

子どもの礼拝でトルストイ原作「靴屋のマルティン」という紙芝居をしました。

奥さんと一人息子を亡くした靴屋のマルティン老人は人生に絶望していましたが、人に勧められて聖書を読み始めます。ある晩、夢の中でイエス・キリストが現れ、「明日、私はあなたを訪ねる」と告げます。翌日マルティンは仕事をしながら、行き交う通行人を見てはイエスを探します。イエスの代わりに彼が見たのは寒さに震える掃除夫や、お腹をすかせた赤ん坊を抱えている貧しい身なりの母親、りんご売りからりんごを盗んだ空腹の少年。マルティンはそれらを目にするたびに気の毒に思い、仕事場に招き入れて温かい飲み物やスープを出し、赤ん坊に温かい毛布を与え、りんご売りのお婆さんと少年が和解するのを手伝います。その晩「イエスは結局、来なかったな」とマルティン思いますが、夢の中にイエスが現れて「あなたが親切にした人々が実は私だったのだ」と告げます。

この物語は、神は人間から遠く離れた天国にいる存在ではなく、日常の中の隣人や出来事を通して、私たちを励まし慰め愛してくださる存在なのだというキリスト教信仰の原点を描いています。困った人を目にして、居ても立っても居られず行動したマルティンの行為の中に、神の愛が働いているのです。そのことをマルティンに教えるために、神は困った人になって現れたのです。 先月の「あやめだより」で紹介した、ウィリアム・ブレイクの「ひとのかなしみ」という詩に出てくる父や母は、イエス・キリストが彼らの内にいて、不安や悲しみに泣く子どもを抱き上げ、その涙をふき取るのです。あなたのそばにいる弱いものに心を配り、慈しみ、大切にすることが神の愛〜報酬を求めない無償の愛〜でアガペーと呼ばれます。そうです、保護者の皆さんの内にもあやめの先生たちの内にもアガペーの片鱗はあるのです。そして泣いている子を心配して声をかける友だちの内にもアガぺーの小さな萌芽はあるのです。

(園長:今石正人)