園長メッセージ

園長メッセージ
Message from the director

10月号

今年の夏は連日のように熱中症警戒警報が出て、記録的な猛暑に苦しみました。これは地球沸騰化とも呼ばれる現象のせいです。石油や石炭を使って発電したり、ジェット機を飛ばしたり、電車を走らせたり、工業製品を作ったりと、人間だけが快適で便利で豊かな生活を営むために排出される二酸化炭素が増えすぎたために、世界規模で起こっている現象です。このような異常気象と宮沢賢治の物語(「あやめだより」9月号)はどこに接点があるのでしょうか。

それは一言で言うと、人間が神(日本では「自然」)を怖がらなくなったからです。19世紀末、ヨーロッパでは哲学者ニーチェが「神は死んだ。われわれが神を殺したのだ」と宣言しました。人間が自分たちの都合のいいように、地下資源を無制限に採掘し、海洋資源を乱獲し、熱帯雨林を大規模に伐採し農地に変えたり製紙用パルプを作ってきました。さらに農薬や工場排煙・排水は土や大気、河川を汚染してきました。人間の経済活動のために自然体系が調和を失い、多くの動植物が絶滅に追いやられ、地球が沸騰化しています。

賢治の考え方は「人は恐縮しながら自然の中で生きていくべきだ」というものです。見えない神を畏(おそ)れ敬うからこそ、畑を起こしたり家を作ったりするのに、いちいち「いいかあ〜」と許可を求めます。森の神々は許可しますが、そこに住むオオカミや山男などは、農民の子どもをさらったり、農具や収穫した粟を隠したりして、彼らに自然からの警告を知らせます。農夫たちは大切な子どもや農具、粟を彼らから取り戻して、大地や森の恵みに感謝して粟餅を作って持っていきます。現代ではどうでしょうか。土地や森は売買の対象となり、神々に許可をもらう必要はない。ブルドーザーとトラックで、あっという間に森は農地や宅地、ゴルフ場に変わります。

賢治の物語は「しかしその粟餅も、時節がら、ずいぶん小さくなった」と終わっています。自然の豊かな恵みに対する感謝を、森の主たちから要求された人間。しかしそのお礼もだんだん小さくなっていきます。農夫は神を畏(おそ)れなくなり、それに比例して粟餅も小さくなっていきました。

あやめファミリーのメンバーが、人間を超えた、目に見えない存在に気づき、その恵みに感謝することができますように…。

(園長:今石正人)